2022.6.22
2022年5月、かねてより思い描いていた紀伊半島一周の航海に出ることにした。英虞湾から関空マリーナまでおよそ180海里の大航海。これを1日で完遂する。iPilotの取り付け位置変更が主目的。志摩のマリーナでもできる工事だが、あえて紀伊半島を巡る旅に出た。船の性能を見極めたい思いと、自分の操船スキルがどの程度なのかを確認したかった。単独行。海上で何かあっても自力で解決するより他に術がない。船体、動力はいつにも増してしっかりとメンテを行なってもらった。熊野灘、潮の岬は言わずと知れた海の難所。出航日は予報と天気図を睨みながら念入りに決める。
出港前日、船の清掃と予備燃料等を積み込む。今夜は船中泊。月の出は朝方。真っ暗闇の中で妙に興奮が収まらない。寝袋に潜り込んでも、どうしても眠れない。不安と楽しみが交錯する夜。時折猪が林で餌を漁る音が聞こえる。桟橋までは来ないよね・・・ 午前3時半、意を決してエンジンを始動!海が白らむ4時半出港だ。湾内で計器やエンジンの調子を確認しながら25ノットで湾口へ向かう。
一路西の三木崎を目指す。ふと後方を振り返ると、御座岬から出るお日様が背中を押してくれているようだしばらく右後方から1m程度の追い波の中を22ノットで走る。思いのほか船底も叩かず走ってくれる。ただ、オートパイロットの調子が今ひとつで、目標から大きく右方に外れていく。仕方がないのでオーパイを諦め手動運転で頑張ることにした。時折カツオドリの群れが魚を追っている。ルアーを投げたい気持ちをおさえ、ひたすら西を目指す。
七里浜沖。航行区域の関係上新宮あたりで沿岸5海里に入る必要がある。浜を右手に艇を飛ばすも、突然定置網が現れた!かなり沖まで張り出している。これをかわしながら宇久井、那智勝浦方面へ転針。波は少し落ちてきたようだがチョッピーであることに変わりはない。慎重に艇を進める。
午前8時半、串本大島の串本港前まで辿り着いた。ちょうど4時間。予定通り平均速度20マイルで走れたようだ。ここで遅めの朝食。燃料消費は推測150Lほど。予備タンクから80Lをメインタンクへ移す。これが初めての作業で不慣れなため重労働!120L移す予定だったのに・・・腰痛い!
島陰から串本大橋を出ると、そこはもう本州最南端の潮の岬だ! 行き交う本線が数珠繋ぎになって行き交っている。さあ!念願の岬沖での釣りダァ!クレ崎には磯釣り師が大勢渡っている。この沖には撒き餌が効いて魚が寄っているはずだ。1時間の予定で竿を出す。一投目、いきなりジグをひったくって行く当たり!
とても美しいアカハタちゃんが来てくれましたぁ!念願成就! 潮岬での第1号である。 と、島陰から一隻のゴムボートが全速力でやってくる。あれは・・・!
海上保安庁の臨検だ! 船検証と運転免許証の提示を求められた。調べ自体は何も問題なかったのだけれど、いわゆる世間話が長い! タメになる話もあるから我慢できるけど、釣りの時間が刻々と無くなっていく。結局アカハタの1投だけで時間切れ。岬前での釣りなど、今後あるかどうか分からないのにね!
さあ、少し飛ばして行こう!あまり遅くなると皆が心配する。海況良く、3600rpmでも22ノット出てる。岬から次の岬へと船を進める・・・えっ!?
船外機に衝撃が走った! スワッ、何事かと急いでエンジン停止! ペラを覗くとビニール袋が引っかかっている。チルトアップすると難無く袋は外れてくれた。Y32では二度ペラにロープが絡んだことがあった。エンジン二機掛けの船だったのでマリーナまで片肺で帰った。やはりサメがいる海では潜りたくはないもんね。その点船外機はありがたい! 全てのパワー源が集中しているし、チルトができるのでロープ等も楽に外せるね。その後も不調な箇所はなく白崎海岸沖を12時頃通過した。
田倉崎は浅瀬が多いので注意が必要だ。友ヶ島の中瀬戸を目指して大きく迂回する。加太瀬戸は急流で潮がぶつかり合っていた。鯛を釣りたい気持ちに襲われたが、長時間の運転で肉体的にも精神的にも疲れが出てた。で、パス!
3時前、関空マリーナに無事到着!ヤマハのスタッフの方々が桟橋でモヤイを取ってくれ、大冒険の往路が終わった。